膵嚢胞(すいのうほう)とは、膵臓内や膵臓の表面に液体が溜まった袋状のものです。膵嚢胞には、良性のものから悪性化するものまで、さまざまな種類があります。そのため、嚢胞の特徴やリスクに応じた適切な診断と管理が重要です。

膵嚢胞
膵嚢胞
膵嚢胞(すいのうほう)とは、膵臓内や膵臓の表面に液体が溜まった袋状のものです。膵嚢胞には、良性のものから悪性化するものまで、さまざまな種類があります。そのため、嚢胞の特徴やリスクに応じた適切な診断と管理が重要です。
膵嚢胞には、原因によっていくつか分類がありますが、主なものは以下のとおりです。
貯留嚢胞
分泌物が排出される経路が、炎症や腫瘍によって管がふさがれたり、先天的な異常や外傷による変形するなどの原因で詰まったり妨げられたりすることで発生します。
仮性膵嚢胞
膵炎や膵外傷が原因で漏れだした膵液が周囲の組織に覆われることで形成された嚢胞です。通常は良性であり、無症状の場合も多いですが、大きくなると腹痛や消化不良、圧迫感などの症状を引き起こすことがあります。
無症状の場合は経過観察が選択されることが多いですが、症状がある場合や大きくなった場合には、内視鏡的な処置や手術が必要になることがあります。
先天性膵嚢胞
生まれつき存在するもので、遺伝性疾患(例:多発性嚢胞腎)に関連していることがあります。極めて稀な嚢胞で、通常は無症状で治療の必要がありませんが、大きくなる場合は処置が必要となります。
膵管内乳頭粘液性腫瘍
(IPMN)
膵管という膵臓を通る膵液の通る管の内側に粘液を産生する腫瘍が発生する病態です。膵管に沿って発生し、悪性化するリスクがあります。
初期には無症状ですが、嚢胞が大きくなると腹痛や黄疸が現れることがあります。
主膵管型、分枝型、混合型の3つのタイプがあり、主膵管型は悪性化リスクが高いといわれています。
腹部超音波検査、CT、MRIなどで、腫瘍の大きさや形状に変化がないかどうか経過観察が必要です。悪性化のリスクが高いと判断された場合は、手術を検討することがあります。
多くの膵嚢胞は無症状で、健康診断や他の病気の検査中に偶然発見されることが多いです。ただし、大きくなったり感染したりすると以下の症状が現れることがあります。
嚢胞が大きくなり膵臓や周囲の臓器を圧迫することで、腹痛(特に上腹部)の痛みが生じることがあります。膵炎(膵臓の炎症)が発生すると、強い腹痛が特徴的です。嚢胞の圧迫で消化器に影響が出る場合、腹部の不快感や膨満感を感じることがあります。
膵嚢胞が胃や腸を圧迫すると、食べ物がうまく通らず吐き気や嘔吐が起きることがあります。また、嚢胞の圧迫や炎症による不快感で食欲が低下する場合があります。
嚢胞が膵管や胆管を圧迫することで胆汁の流れが滞り、黄疸と呼ばれる皮膚や目の白い部分が黄色くなる症状が現れることがあります。膵液の分泌が妨げられると消化機能が低下し、脂肪が消化されず便が脂っぽくなる場合(脂肪便)があります。
嚢胞に感染が起きた場合、発熱や全身の倦怠感が現れることがあります。
また、長期間の膵臓の機能障害や悪性化により体重が減ることがあります。
膵炎や嚢胞の破裂を疑うような「急激に強い腹痛」、「黄疸」の急速な悪化、嚢胞の感染や膵膿瘍を疑う「高熱や悪寒」、腸閉塞の可能性がある「吐き気や嘔吐」の持続、体重減少や全身の倦怠感がある場合は、速やかに医療機関の受診をすることが重要です。
腹部超音波検査
腹部に超音波を当てて状態を確認します。身体への負担が少ない検査方法です。
CT検査
嚢胞の構造や位置、石灰化の有無を評価できます
MRI検査
膵管とのつながりや内容物など膵臓全体を把握することが可能です。
膵嚢胞は大多数が無症状で経過観察が中心ですが、悪性化のリスクが高い場合には、早期の手術が必要となることもあります。
健康診断や人間ドックなどで膵嚢胞が見つかった場合は、専門医による詳細な診断と適切な治療計画を立てることが重要ですので、お気軽に当院へご相談ください。
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